「保証人」
この言葉を時々耳にすることがありませんか。
そして、その役割・責任等をあまり理解せずに引き受けてしまうこともあるかもしれません。
保証人についてご説明する前に、保証債務について簡単に説明させていただきます。

保証債務とは

保証債務とは債権者と保証人となるべき者との間の保証契約により成立するもので、主たる債務とは別の債務のことです。何か大きな借入れをして債務が発生し、その債務の返済のために別途独立して発生する債務です。

 

保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負うのです。

 

また、保証人は主たる債務者に代わって債務の弁済をしたときは、主たる債務者に対して求償することができます。ここで言う求償とは、保証人が主たる債務者に代わって支払った金銭を主たる債務者に請求することです。

 

例えば、CはBのAに対する債務について、Aとの間で保証人となる契約を締結しました。
この場合、保証人Cは主たる債務者Bが債務を履行しなければ、主たる債務者Bに代わって債務を履行する責任を負うという債務(保証債務)を負います。
そして、保証人Cが債務を弁済したときは、原則として主たる債務者Bに対して求償(返済を求める)することができるのです。

 

保証契約は、保証人が自己の責任を十分に認識していないことが多いため、保証契約を慎重にさせ保証人を保護するために、書面で記録する必要があります。
口約束ではだめなのです。

保証債務の性質

保証債務は、主たる債務者がその債務を履行しない場合に初めて履行を求められます。

 

保証人には、債権者から債務の履行を求められた時に、「催告の抗弁権」および「検索の抗弁権」を行使することが原則認められています。

① 催告の抗弁権
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人はまず主たる債務者に催告(主たる債務者に請求すること)をすべき旨を主張することができます。

 

ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、またはその行方が知れないときには主張することができません。

 

例えば、CはBのAに対する100万円の債務について、Aとの間で保証人となる契約を締結したとします。
この場合、債権者Aがいきなり保証人Cに請求したときは、保証人Cは原則として「まず主たる債務者Bに請求してください」と主張することができます。

② 検索の抗弁権
債権者が主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行(主たる債務者に請求すること)が容易であることを証明したときは、債権者はまず主たる債務者の財産について執行しなければなりません。

 

例えば、①の「催告の抗弁権」の例で、保証人Cは「主たる債務者Bに弁済する資力があること」「主たる債務者Bへの執行が容易であること」を証明すれば、「まず主たる債務者Bの財産に対して請求してください」と主張することができます。

③ 催告の抗弁権、検索の抗弁権を行使することによる効果
保証人が「催告の抗弁権」または「検索の抗弁権」を行使したにも関わらず、債権者が催告または執行(主たる債務者Bへ請求すること)をすることを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかった時は、保証人は直ちに催告または執行をすれば弁済を得ることができた限度でその義務を免れます。

 

例えば、①の「催告の抗弁権」の例で、債権者Aが保証人Cから「催告の抗弁権」または「検索の抗弁権」を行使された後、すぐさま催告または執行(Bへ請求すること)をすれば80万円を回収することができたのに、それを怠ったためにその後主たる債務者Bの資産状況が悪化し、50万円しか回収できなかったときは、保証人Cは30万円(80万円-50万円)の限度でその支払い義務を免れることになります。
よって保証人Cは100万円-50万円(Bが返済した額)-30万円(Aがもたついたせいで取り損ねた額)=20万円を弁済すれば良いのです。

保証人の要件

保証人は原則として誰でもなることができます。しかし、契約によって保証人を立てる義務があるときは、次の要件を満たす者でなければ保証人となることができません。
① 行為能力者であること(※)
② 弁済をする資力を有すること
※行為能力者とは、単独で有効な法律行為(契約行為)をすることができる人のことで、未成年者。成年被後見人、被保佐人、被補助人ではない人です。

連帯保証について

連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して(同じ立場で)債務を負担する保証を言います。
例えば、CがBのAに対する債務について、Aとの間で連帯保証人となる契約を締結した場合、債権者Aがいきなり連帯保証人Cに請求してきたときであっても、連帯保証人Cは、「先に主たる債務者Bに請求してください」(催告の抗弁権)と言うことができません。
検索の抗弁権も同様に行使できません。

 

通常の保証債務では、主たる債務者がその債務を履行しない場合に初めて履行しなければならなくなりますが、連帯保証にはこのような定めがなく、債権者からいきなり請求を受けてしまいます。

 

いかがでしょうか。
保証人にはこのような責任が伴いますので、引き受けることには慎重に判断する必要があります。