おそらく多くの方が高齢になると多くのリスクを抱えることになることはお感じになられていると思います。
認知症もそのリスクのひとつです。

 

認知症になると日常生活にも大きな制約が発生することになります。
法律行為という言葉をご存知でしょうか。
簡単に言いますと、互いに意思表示して他人と取引をすることです。
(「意思表示の内容どおりの法律上の効果 (権利の変動) が生じるもの」と言います。)
契約の締結がその例です。
認知症になって判断能力がなくなると、その法律行為ができなくなるのです。

 

あなたもいつかはそうなるだろうとお思いになっていても、それはまだ先のことだとお思いになっているかもしれません。
でも人は年齢順には死なないというのと同じで、年齢に関係なく突然認知症になってしまうのです。

 

認知症になった場合に、その先の生活のために成年後見制度を利用することがあります。
成年後見制度とは、認知症のように判断能力がない人のために、家庭裁判所が選任した成年後見人が、判断能力のない方(成年被後見人)を代理して法律行為を行うことで成年被後見人を保護する制度です。

 

判断能力がない方を保護してくれるという面で良い制度ではありますが、この制度の目的は「成年被後見人の財産の保護」なので、成年被後見人の利益になるになることしかできません。
つまり成年被後見人ご本人のためにしか財産を使えないのです。

 

当たり前のことのように思えるかもしれませんが、例えば可愛いお孫さんのために何か買ってあげるとか、大学進学のために援助してあげたいと思っていたとしても、成年後見人のお世話になるとそれができなくなるのです。

 

また、投資のために不動産購入を考えていたとしても、それがあなたの財産の減少や資産運用のリスクにさらしてしまうと言うことで、あなたの利益にならないと判断されて、投資ができなくなるのです。

 

いかがでしょうか。
認知症にならないよう体調管理に努めることも大事ですが、なってしまった後のことをしっかりと考える必要があると思いませんか。

 

ここでその対策のひとつとして、家族信託があります。
信託とは委託者(財産の所有者)が一定の目的のために信託行為(信託契約など)によって信頼できる相手(受託者)に対して財産を移転し、その受託者は信託行為に従って、その移転を受けた財産(信託財産)の管理・処分等をすることです。

 

そして、かつては信託銀行などに預ける商事信託が「信託」と呼ばれていましたが、平成19年の法改正により家族間で信託ができるようになりました。
これが家族信託(民事信託)です。

 

ここで家族信託の例を挙げてみましょう。
信託の例)
委託者 : あなた
者 : あなたの長男
者 : あなた
信託財産 : 賃貸マンション
信託の終了事由および残余財産の帰属権利者 : あなたの死亡により終了し、その後は長男に帰属する

 

この信託についてですが、あなた所有のマンション管理を長男に任せて、その家賃収入をあなたの生活費に充てるものです。
そして、あなただけのためでなく、お孫さんのために支出するなど、現時点での願望や想定できることを信託契約に盛り込むのです。
ここが成年後見制度との違いなのです。

 

この信託財産は、民法上は受託者である長男が所有者となりますが、実際に利益を受けるのは受益者であるあなたですので、税務上は受益者であるあなたが所有者と見なされます。

そして、この信託財産は、受託者である長男名義になりますが、長男固有の財産(信託前からもともと長男が持っていた財産)とは区別して管理されます。
したがって、例えば長男が破産したとしても、信託財産が差し押えられることはなく、長男が亡くなったとしても、長男の相続財産として相続人のものになることもありません。

 

この信託により、あなたが認知症になっても財産を管理するのは長男ですので、自分のためにしか使えないなどと言う、財産管理での不便な思いをすることはありません。

 

家族信託のメリットを感じられましたでしょうか。
こんな制度があると言うことを覚えておいていただくと、今後の選択肢が増えて多様な生き方ができるかもしれません。

 

なお、信託は綿密な打ち合わせによりベストな仕組みを作り上げることで、その効果を発揮できます。あなたの想いを行政書士にすべて伝えてください。その想いを行政書士はしっかりと受け止めます。